口腔ガンについて

口腔ガン

お口の中にできるガンは、その多くが舌や歯肉にできる扁平上皮癌です。しかしながら、唾液腺にできる腺癌、リンパ節にできる悪性リンパ腫、骨にできる骨肉腫や骨髄腫、また粘膜にできる悪性黒色腫も少なからず見られます。さらに、上顎洞、口唇や頬などの顔面、中咽頭、頸部といった周辺臓器のガンもまた、治療の適応となります。
(治療方針)手術療法、放射線療法、化学療法があり、これらが併用される事が多いです。

口腔ガンとは?

あまり知られていませんが、胃や肺などの臓器と同様に、お口の中にもガンができることをご存知ですか?わが国における口腔ガンの罹患率はガン全体の約2%にすぎませんが、この数値は血液腫瘍である白血病を上回っており、直接生命に関わる重大な病気であることには違いありません。また、幸いにして最悪の事態は避けられたとしても、口腔ガンのために「食べる」「飲む」「話す」「呼吸する」など私たちが生きていくうえで必要なお口の機能が大きく妨げられ、 QOL(生活の質)が著しく低下してしまう場合もあります。
ところで、口腔内には良性・悪性を含めて多くの腫瘍が存在します。口腔ガンの中で最も多いのは舌にできる舌ガンで、全体の約60%を占めています。その次に多いのが歯茎にできる歯肉ガン、以下舌と歯茎の間にできる口底ガン、頬の内側粘膜にできる頬粘膜ガン、お口の天井部分にできる硬口蓋(こうこうがい)ガンと続きます。
また、50歳以上の比較的ご高齢の方に発症しやすく、女性よりも男性に多い傾向があります。

どんな人がかかりやすいの?

口腔ガンを引き起こすリスク・ファクターとして最も重要なものは喫煙で、喫煙者は非喫煙者より口腔ガンでの死亡率が約4倍高いといわれています。また、パイプや葉巻の煙による熱が粘膜を刺激することによってガンになりやすいと考えられることから、パイプや葉巻は紙巻きタバコよりもリスクが高いとされています。さらに、日本ではあまり見かけませんが、嗅ぎタバコや噛みタバコも口腔ガンの危険因子として重要視されています。その他の原因としては飲酒、口腔清掃状態の不良、虫歯や壊れた義歯、かぶせ物などによる慢性化した機械的刺激、熱い食べ物や辛い刺激物、また栄養不良やウイルスも指摘されています。特に、これらのリスク・ファクターが重なるとダブル、トリプル、マルチとなって危険性が高まるため、注意が必要です。
また、最も口腔ガンにかかりやすいタイプは、50歳以上の男性で飲酒時にタバコを吸う習慣を持つ人です。飲酒時のタバコは、タバコに含まれる発がん性物質がアルコールで溶かされて口腔粘膜に作用するため、よりリスクが高いとされています。

口腔ガンの自覚症状は?

一般的には、初期の口腔ガンには痛みや出血などの自覚症状はなく、硬いしこりや境界がはっきりとした腫瘍ができることで気がつきます。また、口内炎と似ている場合もありますが、口内炎は触るとブヨブヨとやわらかく、ガンは硬いので見分けがつきます。通常の口内炎であれば、1~2週間で治癒しますが、なかなか治らない口内炎には注意が必要です。
舌ガンができやすいのは舌の両脇の部分で、尖端や真ん中は少ないものです。また、舌の奥には有郭乳頭や葉状乳頭とよばれる正常な突起物があり、これらをガンと勘違いする方もいらっしゃるようです。その他、お口の天井部分や下の歯茎の内側には正常な骨の突起があり、こちらもまた勘違いされやすいようです。
次に進行ガンですが、症状が悪化すると硬いしこりが触れ、冷たい物や辛い食べ物、酸っぱい物がしみたり、痛みを感じるようになります。また、ガンが大きくなってくると言葉が喋りにくくなる、食事がとりにくくなる、お口が開けにくくなる、潰瘍を形成して痛みや出血が起こるといった現象があらわれます。さらに進行したケースでは、頸部のリンパ節に転移してアゴの下や首が膨張をきたすことが多くなります。
心配な方は、一度口腔外科に受診する事をお勧め致します。

口腔ガンの症状と症例写真

舌ガン

舌ガンの多くは、歯との接触によって刺激を受けやすい舌縁部(舌の横の部分)にできます。
初期の病変は、粘膜の表面下で小さなしこり(腫瘤)ができるだけで、表面にはほとんど変化が生じません。また、逆に表面下には腫瘤が生じず、粘膜の表面が白くなるだけの場合もあります。そのため、ガンであるか否かの判別が困難であるため、口腔外科を受診して病理組織検査や注意深い経過観察を受ける必要があります。初期の段階では、痛みだけがある場合や粘膜の表面が赤くなるケースなど、その症状は様々です。
ガンが進行すると粘膜の表面が隆起したり、表面下で腫瘤ができて硬くなったり(硬結)します。腫瘤ができると中心部の血行が悪くなって組織の壊死が生じ、粘膜に潰瘍ができます。ガンの潰瘍の周囲は硬くなって盛り上がっており(硬結)、口内炎の潰瘍と容易に区別することができます。ただし、初期の症状として浅い潰瘍のみが見られる場合もあり、この場合は判別が難しくなります。
一方、舌縁部の最後方部には葉状乳頭という膨らみがありますが、これは正常なリンパ組織です。また、舌根部(舌の奥の部分)の表面に並んでいる有郭乳頭という小さな膨らみも同様に、正常なリンパ組織です。
当院では口内炎や舌痛症、また葉状乳頭や有郭乳頭の炎症を舌ガンではないかと心配される方々が多く来院されています。万一気になるようでしたら、早めの受診をお勧めします。

歯肉ガン

歯肉ガンは、歯周病や虫歯による炎症が繰り返し生じている歯の周囲に発生することが多く、適合不良な義歯を入れている場合には義歯の下の粘膜にも発生することがあります。
症状は歯肉が腫れて出血しやすくなる場合が多く(肉芽型)、潰瘍ができるケースもあります。また、歯肉のすぐ下には顎骨があり、歯肉ガンが発生すると顎骨が溶けて歯がグラグラすることもあります。困ったことに、歯肉ガンのこれらの症状は歯周病とよく似ているためしばしば誤った診断によって抜歯され、ガンを進行させてしまう場合があります。
このようなケースは実は多く見られますので、抜歯する前に口腔外科へ受診する事をお勧め致します。
また、義歯下の粘膜に発生する潰瘍も義歯による潰瘍か、それともガンによるものかの区別が難しい場合があります。そのため、義歯を調整しても潰瘍が治らない場合は、口腔外科を受診しレントゲン検査や病理組織検査を検討する必要があります。

口腔底ガン

舌の下方の口の底の部分を口腔底と呼び、この部分にできるガンを口腔底ガンといいます。舌の裏側の舌表面ではなく、下顎と舌に囲まれた平らな部分にできるガンです。
このガンの初期症状は、粘膜の表面が白くなったり赤くなったりするだけですが、進行すると粘膜の隆起や腫瘤、また潰瘍が生じる場合もあります。通常は舌に隠れて目にする機会が少ない場所であるため、知らぬ間に進行しているケースもよくあります。
また、ガン発生の原因としては喫煙や飲酒などによる刺激が挙げられています。

頬粘膜ガン

頬の内側の粘膜に発生するガンです。歯の刺激を受けやすい部分にできやすく、喫煙による刺激も原因と考えられています。
初期には粘膜の表面が白くなったり赤くなったりするだけですが、進行すると粘膜の隆起や腫瘤、また潰瘍が生じる場合もあります。進行すると、口が開きにくくなるのが特徴です。

口蓋粘膜ガン

口の天井の部分を口蓋といい、この部分の粘膜に発生するガンです。
このガンは、病理組織学的に扁平上皮ガンと腺ガン(腺系ガン)の2種類に分類されます。口蓋の後ろ半分(軟口蓋)は腺ガンが大多数を占め、粘膜は膨らみを見せつつも(膨隆)表面は正常で潰瘍は生じず、しばしば痛みが伴います。一方、扁平上皮ガンの場合は粘膜の隆起や腫瘤、また潰瘍が生じることもあります。

口唇ガン

口唇に発生するガンで、腫瘤が隆起する場合が多く、潰瘍ができることもあります。

上顎洞ガン

上顎の骨の中には上顎洞という空洞があり、その部分に発生するガンです。
症状はガンの進展方向によって異なり、上顎の歯の付け根の粘膜や頬の腫れ、鼻詰まりや鼻水、鼻出血、歯痛、頭痛、開口障害、眼球突出、また複視(ものが2重に見えること)など多岐にわたります。

口腔ガンの診断

口腔ガンはその形状と症状を診察した上で、視診と触診、そして生検によって診断されます。生検とは、病変の組織の一部を局所麻酔下で切り取り、顕微鏡による病理検査を行うことをいい、その段階でガン細胞が認められれば確定です。また、ほとんどの口腔ガンが扁平上皮ガンという組織形を持っています。
こうしてガンが確定されると、次にCT検査やMRI検査などのいわゆる画像検査を行うことにより、ガンの進行度や転移の有無を調べることになります。CT検査はいろいろな角度から体内の詳細画像を連続的に撮影し、コンピューターを使って非常に鮮明な画像を得ることができる重要な検査です。従って、この検査により他の臓器やリンパ節への転移の有無、ガンの進行状態などを正確に調べることが可能となります。また、MRI検査は磁場を使用することにより、様々な角度から体内の多くの情報を得られる優れた検査方法です。

口腔ガンを予防するには?

口腔ガンの予防のためには、何より過度の喫煙と飲酒を控えることがポイントです。また、虫歯で欠けてしまった歯や詰め物が取れてしまった歯などがある場合は、慢性的に舌や口腔粘膜を刺激してしまう為、まずは歯科医院に受診し歯の治療を行い、尖った縁を研磨するなどの処置も必要です。

まとめると、

  • ・刺激物(特にタバコとアルコール)を控える
  • ・お口の中を清潔にしておく
  • ・口腔内の粘膜に慢性的な刺激を与えない(治療途中でそのまま放置している歯などがないこと)

前ガン病変・前ガン状態

口腔粘膜は、皮膚と違って表面に角質層のない柔らかい性状を持ち、表面の角化が亢進すると白くなって「白板症」になります。中でも細胞の形状や大きさ、並び方が不規則(異形成)な粘膜は、血管の色が透けて粘膜が赤く見える 「紅板症」となるケースがあります。
ガンとはそもそも細胞の形状や大きさ、並び方が乱れ、正常な組織構造が崩れた状態をいいますが、白板症や紅板症はガンになる可能性がある「前ガン病変」であるといえます。言葉がよく似た「前ガン状態」は、ガンになる可能性が明確に高くなった状態をいい、梅毒性口内炎や口腔扁平苔癬、Plummer-Vinson症候群、口腔粘膜下線維腫症などが該当します。
前ガン状態や前ガン病変に喫煙や飲酒などの刺激が慢性的に加わると、ガン化しやすくなるため、これらの習慣の中止と医療機関への定期的な受診(経過観察)が必要です。また、口腔粘膜の異形成が進むと「上皮内ガン」というガンにかかりやすく、速やかな治療が必要となります。

白板症

口腔粘膜表面の角化が亢進し、白く変化したものを「白板症」といいます。ただし粘膜が白くなっていても、細菌による汚れ(バイオフィルム)やカンジダ菌、噛み傷、凍傷など原因が明らかなものは白板症に該当せず、はっきりとした理由が認められないものをいいます。 粘膜の角化が亢進していること自体は問題ないのですが、角化層深部の粘膜上皮の細胞の形や大きさ、細胞の並び(組織構築)に異常がある場合はガンに変化する可能性があります。この状態を「異形成」と呼び、「前ガン病変」の代表的な症状であるため、歯科や口腔外科、耳鼻咽喉科への受診が必要となります。
ただし、前ガン病変とはいえ白板症の多くはそのまま変化せず、ガン化するケースは少数です。角化が亢進していても、異形成がなければガン化することはありません。また、ガン化の可能性についてはある程度見た目で判断でき、異形成がありそうな場合は病変の一部あるいは全部を切り取り、「生検」という病理組織検査を行います。そして、組織検査の結果に応じて経過観察の期間を決めたり、手術による切除を行いますが、すでにガン化している場合は、いうまでもなく手術や放射線治療を速やかに開始します。

紅板症

粘膜が赤くなっている状態を「紅板症」といいます。白板症は粘膜表面の角化が亢進して白くなりますが、紅板症では粘膜上皮に角化ではない異常が見られ、血管が拡張して赤くなります。紅板症は珍しい病気ではありますが、口腔内で最もガン化しやすい「前ガン病変」ともいえ、紅板症に見えても組織検査を行うと、すでに上皮内ガンに変化しているケースも珍しくありません。

口腔扁平苔癬(へんぺいたいせん)

「扁平苔癬」とは、口腔粘膜や陰部粘膜、皮膚に生じる炎症性の角化病変をいいます。皮膚の場合は平らに盛り上がった丘疹、びらんなど多様な症状が見られますが、口腔扁平苔癬は線状や網目状の白色で周囲が発赤し、ただれることが特徴です。また、他の病変と同様に、頬粘膜に左右対称に出現するケースが多数ですが、他に歯肉や口蓋、舌、唇、のどなどに現れる場合もあります。

舌ガンと間違いやすい病気

舌痛症

「舌痛症」とは、舌に外傷や炎症、腫瘍など明らかな病気が見当たらないにもかかわらず、舌の痛みが続く病気をいいます。もちろん舌ガンではないのですが、不安を抱えて来院されるケースが増えています。

舌ガンと舌痛症との違い
  舌ガン 舌痛症
痛み 生じない場合が多い 食事中は痛まないことが多い
何もしていないとき痛みが強くなる
ことが多い
粘膜の形態 膨らみ(腫瘤)や凹み(潰瘍)が生じる
白くなる
外見上の変化は少ないが、凹み(潰瘍)が生じる
歯の型がつくことがある
出現部位 舌側面や下面に生じ
ることが多い
舌先や側面に生じることが多い
舌全体が痛むことがある
経過 腫瘤や潰瘍が拡大する 変化なく症状が継続する
自然に治る場合がある
葉状乳頭

舌側面(舌縁)の後方にある、ヒダヒダの少し膨らんだ楕円形の部分を「葉状乳頭」といいます。舌ガンとよく似た形態ですが、葉状乳頭は舌の正常な一組織であり、病気ではありません。
たとえば大臼歯で葉状乳頭を噛んで傷つけたり、歯ブラシが原因で葉状乳頭が腫れて痛むと、「舌にできものができた」、「舌ガンではないか」と不安に思い、来院されるケースも珍しくありません。
いうまでもなく、正常な組織が傷つき腫れているだけのことなので、清潔と安静を心がけると自然に元に戻ります。

舌ガンと有郭乳頭

舌の奥に横一列に並ぶ、小さな円形の膨らみを「有郭乳頭」といいます。 舌の付け根にあって隠れているため、通常気づくことはありませんが、口腔内やのどに違和感やヒリヒリ感、痛みが生じた場合、その存在を意識することになります。 一見したところ、舌の表面の膨らみがガンを想起させがちですが、有郭乳頭は舌の正常な一組織であって、もちろん病気ではありません。

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